「遊びの歴史学」第2部 講義メモ
01:44:38 第2部開始
01:44:46 Intermezzo: 史料の読解
1369年4月3日付 フランス国王シャルル5世の王令
開封特許状
特定の個人、団体に与えたもの(封印状)でなく、だれでも内容を知ることができる
王国全体に関わる王が命ずる法令で、遊びのような生活にかかわるものもあった
触れ役がラッパ師とともに一定期間に何度もお触れをして周知徹底させる
古文書の解読
本物か偽物か
歴史の補助学
古書体学:どの時代の文化、社会で訓練を積んだ書き手が書いたものか
言語文献学:使われている語彙、略字、句読点などで判断
物理的特徴:どんな素材が使われているか、どんなインク、ペン、レイアウトを使っているか
文書型式学:文書局の伝統的な形式を確かめる
どこでいつお触れを出したか、王がその頃に実在したか
印章学:文書にぶらさがった印章が国王のものか
サイコロなどの賭博遊びに加えて、いろいろな種類のボール遊び(ポーム、キーウ、パレ、スール、ビーウ)を一斉に禁止している
→ 当時こうした遊びが青年男子の間で流行っていた
5月23日にも同じお触れを繰り返し出している
4月3日にお触れを出したのにみんな守らず遊びまくっている、怠慢である、お触れをやり直して守らせろと書いてある
罰金を取り立てて厳しくせよとある
徴収した罰金の20%を取り締まった刑務官に取らせるとある
同様な内容の王令やパリ奉行の命令が繰り返されている
→ 王令は守られていなかったことがわかる
ノルマンディの住人に戦争で勇敢に戦ったのでスール競技をやってもよいと許可を出している
戦争がんばったからサッカーやっていいよみたいな…(植田)
どれだけ本気でお触れをだしていたのか?(池上)
この王令の時期は100年戦争の真っ只中でフランスはかなりやられていた
半官半民の弩舞台が組織された時期
弓の訓練を徹底させるために、王は遊びをやめさせたかったと思われる
01:59:00 Okakyo「100年戦争時にこんな王令が…しかもぜんぜん守られてなかった…」 02:00:09 中世の遊びの特徴と、近現代との違い
中世の遊びには呪術的、儀礼的側面が濃厚だった
遊びと労働との区別が明確ではない
サイコロ遊び、盤上ゲームは大いなる神を発見しようという真剣な行為だった
ゲルマン人は自分の財産にとどまらず、自分の妻子、自分の身の自由、命を賭けてしまうことがあった
遊びが暦と結びついていた
日本で羽つき、凧揚げを正月にするようなこと
四旬節、謝肉祭に行われるスール競技や闘鶏
サイコロ遊びも、クリスマスに最もよく遊ばれた
1月6日 公現祭にはモモンと呼ばれる遊びがされた
若者が楽師とともに街を回って家でものを隠し、見つけられなければ葡萄酒をふるまう
02:03:20 スライド60:闘鶏
イギリス ホガースの闘鶏の絵
謝肉祭の前の木曜日に、学校の生徒たちの王を選出するための闘鶏
身分の特権としての遊び
騎馬槍試合や狩り:貴族の特権的な遊び
ボール遊びは庶民的な遊びとして始まったが…
ポーム遊び、九柱戯
しだいに貴族が専有していく
自分たちだけのコートを作った
サイコロなどの賭け事遊びは固定した身分を崩してしまう側面があった
貴族が破産して貧乏になるなど
遊びの場としての居酒屋
小教区、街区、若者組などの小集団による団体戦での遊び
こういう団体はもともの遊びのために作られているわけではない?(植田)
軍事、政治の単位としてつくられた団体だが、若者組などは遊びが中心的ともいえる(池上)
02:09:54 スライド62:シエナのパリオ
シエナというイタリアのトスカーナ地方で行われているパリオという地区対抗競馬
キリスト教・神学の立場
当初異教の儀礼的な遊びは暦に組み入れるなどして教会で管理された世俗的なものにしようとした
特にサイコロ遊びなどの運試しは神を試しており、貪欲を産み、諍いになる
禁止しても守られなかった
神学者による遊びの基礎づけ
労働によって閑暇を手に入れる、閑暇は労働の骨休めにも必要
一定の条件下で遊びの価値を認めた
労働と遊びの関係の変化、レジャー(余暇)の誕生
労働と遊びの未文化→遊びが労働が区別され、対立する→遊びと労働が共存する
中世における労働
修道士の考える労働観念:農作業=アダムとイブが犯した原罪のあがないの印
労働は肉体を罪から清めてくれるし、怠惰から守ってくれる、生計を支えてくれる
→魂の救いとして捉えられるようになった
霊的労働(瞑想・読書)と世俗的労働(肉体労働)に区別し、後者を蔑むようになった
世俗的労働に農作業だけでなく、都市部での専門職などの労働も含まれ、経済的活動の効率と世俗的な遊びとの対立が問題になる
02:22:58 Okakyo「労働の世俗化に従って遊びも世俗化し、非難の対象へ」 02:23:07 meta_3「どっちも世俗化した結果労働が遊びを制限することに。なるほど、、、」 遊びの良し悪しを判断のもとになるものが、都市生活者の経済的観念にかわってきたと…(植田)
かつて労働は自然のリズムと結びつき、遊びとも一体化して儀礼となって聖なる世界の統括下にあった
それが13世紀後半以降一変してしまう
13世紀は神学的な観点から遊びを容認する見方が出た反面で、経済的な観点で指南する見方も出てきた(池上)
13世紀以降無為、怠惰、不労と結び付けられた遊びが、余暇、レジャーと結び付けられたのが18,19世紀の産業化時代
労働を補い、促進するような遊び(レジャー)が生まれた
レジャー
フランス語でロワジール、もともとラテン語のリケーレ:許されている自由な時間
自由と結びついた近代的な遊びの概念